冷えとり健康法4:排毒と瞑眩/治療室Pieria<ピエリア>

冷えとり健康法4:排毒と瞑眩
以下の記事は、2006年夏にブログに掲載したものの転記です)

写真は整体の巨星、野口晴哉著の風邪の効用。「風邪を経過させる」ことで身体を治すことを説いた昭和37年初版の名著です。

さて今までは冷えとり生活の具体的な方法の重要項目
(靴下の重ね履き、半身浴、腹七分目)を書きました。ほかにも細かい事項は沢山あるのですが、今後機会を見つけて書いていくことにします。 今回は排毒と瞑眩(めんげん)、実はこれこそ冷えとりの「きも」とも言えます。瞑眩とは好転反応などとも言われ、一時的に症状が悪化したり、古い症状が再発したりすることですが、そのまま経過させれば治癒につながるものです。身体がめざめて治癒に向かう過程の排毒で、古来から漢方の分野では「瞑眩せざれば病治せず」と言われているものです。 病気が治っていくことは、溜め込んでいた病毒が排出されていくことなのです。排毒がなければ治りません。
毒とは検査などで検出されるものではなく「気」の形であることが殆どで、それこそ「病気」です。風邪をひいたり痛んだりするのは身体が病毒を排出するためなので、むしろ歓迎すべきで、本来抑えずに経過させなければならないのです。風邪薬や解熱剤や消炎鎮痛剤などでおさまる症状とは、ただ病毒を抑制しただけで、根本解決にはなっていないのです。薬で抑圧してはいけません。これは本当に重要なことです!(もちろん激しい炎症がある方や衰弱が著しい方など、緊急避難的に薬が必要な場合はあります。)抑圧が続くと、それこそ「たかが風邪」と思っていたことが複雑になり、重篤な疾患に化してしまうこともあるのです。

そして、冷えとりをしている身体は排毒力が高まっていますので、ほぼ間違いなく瞑眩と向き合うことになります。それを決して抑圧せず、「ああ治っていく過程なのだな…」と淡々と受けとめて、素直に経過させていくことが大切です。でも「かえってひどくなった?!」などと無駄に心配をしてしまうと、心の冷えは非常に強いので余計に毒を生んでしまうのです。決して心配をしないこと!それだけのことなのです。
以前書きましたが、私は冷えとりを始めた冬に4回風邪をひきました。なんて不摂生な!と周囲は思ったでしょう。一度全く声が出なくなり、当時会社員だったので電話にも出られずかなり困りましたが2日間程度のことでした。周囲に迷惑をかけているのは申し訳なかったですが、これが瞑眩だと確信していたし、何の迷いもなかったのでそのまま冷えとりを続けていると、少しずつ体調がよくなり抵抗力がついてくるのが実感できました。
その後も瞑眩はいろいろありましたが気にしないので記憶にも残らず、今も決して頑健ではありませんが、軽い風邪は半身浴などで短時間で抜くことができます。西洋薬は10年近く一切使っておらず、ホメオパシーを使うようになってから3年以上漢方薬さえのんでいません。 そして冷えとりをきちんと実行していらっしゃる患者さんも皆、ご自分の成長の度合いに合った、良い経過を辿っています。

そういうわけで瞑眩にはきちんと向き合ってください。いってみればその症状を「病気」と思うか「排毒・瞑眩」と思うか?で、気持ちが180度変わってくると思うのです。いろいろなことが起こります。下痢、嘔吐、発熱、出血、発汗、咳、喉のイガイガ、疼痛、関節痛、頭痛、皮膚のかゆみ、発疹、腫れ物、水虫、動悸、イライラ、全身の脱力感などなど…あらゆる症状です。現在の症状が一時的にひどくなったり、昔の症状が再現したりもします。余分な肉がついている人は一時的に極端に痩せることもあります。でも自分は冷えとりをしているのだと自信を持って、決して心配しないこと。 心配や不安がなく、病毒がそれほどない場合は目立った瞑眩がなく身体が良くなってくることもあります。

私は一人暮らしなので冷えとりのペースも保ち易いですが、冷えとりをしているご本人と家族や周囲の方々との関係がとても難しい場合もあるようです。家庭や社会生活で大切にされている人ほど、周囲は気にします。
「薬のんだ?」「医者にいったほうがいいんじゃない?」
まずはこう言われるでしょう。冷えとりと瞑眩について説明しても、
「そんなの危険よ!本当に悪化していたらどうするの?」「何か大きな病気が潜んでいるかもしれないから、病院に行ったほうがいいよ!」
場合によってはこういう強力な心配を投げ返されます。勿論冷えとりをしていない人には妥当な心配ですが、悪化なのか瞑眩なのかは、不思議に本人が一番よくわかります。瞑眩の場合症状は激しくても思ったほど辛くないのです。更に頭寒足熱のため上半身は薄着で、排毒のため少食にしていると、
「風邪ひいてるのにそんな薄着で!」「沢山食べなきゃ体力つかないわよ!」
などなど、「怖れ」をベースに「常識」を盛り込んだ「心配」という名の「愛」が極まったイライラを投げかけられる可能性もあります。これは愛なので、気持ちだけは有り難くうけとめながらも、冷えとりをする人は相手にきちんと説明し、信念のもとに自らの力を明け渡さない覚悟が必要です。
ご本人は冷えとりをしたいのに、薬をのまないことを家族が心配するのでできない、という方がいらっしゃいました。…「ああ愛って何!?」と思ってしまいますが(涙)、様々な事情への対処方法も、まるごと個人の抱える治癒への課題だと受けとめて、見守るようにしています。

一例ですが、何年も診ている重症の坐骨神経麻痺の患者さん、他にも高血圧や内臓の機能低下等様々な症状があり、あらゆる治療をやり尽くし、私が診はじめた時点で既に10年以上麻痺していた左足は枯れ木のようでした。でも鍼灸治療でどんどん良くなり左右差がないほど太くなって色も良くなり、内臓の検査結果も全て正常になりました。でも麻痺は治らず、良くなりそうになると骨折してしまったり、いろいろなことがおこります。ひどい冷えと精神不安と薬や健康食品の摂りすぎによる消化器の機能低下があり、見るからに体毒が溜まっているので、冷えとりを何年もお勧めし続けて最近ようやく始めました。
最初は絹の靴下を履くだけで痺れがなくなると喜んでいらっしゃいましたが、どんどんお小水が近くなり、左足のかかとに大きな水ぶくれが沢山出来てきました。以前かかとの火傷を皮膚科に通って何ヶ月も治らないということがあったのですが、今回は火傷ではなく自然にできた水ぶくれです。(火傷の時も身体は薬で止めてほしくなかったのでしょう。)多量の尿や水泡という形で排毒しているのです。でもこの方は「不安・心配」という名のブラックホールをお腹に抱えていて全く落ち着きがなく、何度説明しても、本を読んでいただいても瞑眩をご理解いただけません。

患者さん「かかとに一生懸命薬をつけているんですが治らなくて…」
「薬はつけないでください!本に書いてあるでしょう。」
患者さん「仕方がないからお風呂にも入らないでいるんですよ…」
「半身浴してください!足湯でもいいです!」
患者さん「また皮膚科に行けと娘が言うので…」
「行く必要ありません!靴下を履いていてください。」
患者さん「でも心配で心配で、お小水に何度も行くので夜も眠れないし…」
「心配だけはしないでくださいっ!!!」

… 正直ヘトヘトになりながら毎回こんな会話を繰り返しているのですが、先日「もしかして、これ(水ぶくれ)が出るのはいいことなの?」と初めておっしゃいました。私は「そうなんですよ〜!今までこんなの身体が出せなかったのに、出せるようになったの。それ、ちゃんと意識してくださいね!!」

こんな会話がはじめてできたことが嬉しかったですが、いずれにしろ長い道のりです。この方はどれだけ排毒に徹することができるのか、ご縁ですのでおつきあいしていきたいと思っています。 でも…そう、身体で排毒できる方はまだいいのです。重篤な疾患の方は大抵薬剤による抑圧で身体が複雑になっている上に、「不安・心配・恐怖・絶望・悲しみ・怒り」等の見えないブラックホールをお腹の中に持っていて、いくら身体の冷えとりをしても効果が全て吸い込まれるばかりか、絶え間なく毒を生み出してしまいます。心の持ち方を変える必要があり、それは自らの「影」の部分に向き合うことに他なりません。「心の冷えとり」についてを次回に。


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