冷えとり健康法について5:心の冷え/治療室Pieria<ピエリア>

冷えとり健康法5:心の冷え
以下の記事は、2006年夏にブログに掲載したものの転記です)


写真は進藤先生の最も新しい著作、万病を治す「冷えとり」生活療法-冷えは万病のもと。 冷えとりを単なる病気治しではなく、人間全体、動物、自然環境、地球、そして宇宙まですべてを含む「包括科学」と捉え、その進歩と調和を促す法則だとしています。心の冷えをとることの重要性と、子育ての方法について多くページを割いて触れられています。


さて、中国の古典では「食医」という食べ物で身体を治したり病気を予防する医者が最も尊ばれています。薬を処方したり鍼を打ったりする医者よりもずっとランクが高いのです。このことを鍼灸学校在学中に学んだ時、「ふ〜ん、だから医食同源ってことなのね」と単純に私は思いました。チャングムの誓いは韓国のドラマですが、スラッカン(王の御膳を作る厨房)は食材の効能の知識が大切ですし、ネイウオン(医局)と緊密で、王様の病気のためにチャングムが出す処方は薬膳粥という感じですよね。 でも最近、冷えとり健康法と10年以上関わってきて痛感することは、単に食にとどまらず、「食べること、着ること、住まうこと、そして生きることすべて」つまり衣食住と生き方をきちんとする以上に身体にとって大切なことはない!ということなのです。単に予防医学に留まらず、各人の持つ自然治癒力を発揮させて本当の意味での治癒に至らせるための、ほぼ唯一の道ではないかと感じます。そして「冷えとり健康法」は実際にそうなのです。

病気の方や体調がすぐれない方がいらっしゃると、治療家でしたら誰でも「何とかしてあげたい!」と思うはずです。自分の持つ知識や技術をフルに発揮して、少しでも本来の健やかな状態に戻っていただきたいと努力します。勿論個人差がありますが、実際に1〜2回の施術で本来の身体の機能を取り戻せる方も沢山いらっしゃいます。鍼にはそれだけの力があります。 でも実際に臓器等の深刻な病や病毒を抱える方の場合、いくら一生懸命鍼を打ったとしても、いつも素足だったり、食べ過ぎや甘いものの摂りすぎが常習的だったり、そして前回書きましたが、心の冷えが強い方ははっきり言って難しく、いくら鍼灸の技術や東洋医学の知識をふりかざしたところで無力を感じるしかありません。

進藤先生は、「傲慢」「冷酷」「利己」「強欲」という我執を、心の冷えとして挙げています。 傲慢は人を見下し、見栄をはる。裏返しで「卑屈」にもなりやすく権威におもねる。肝臓・胆嚢が悪くなりやすい。 冷酷は自分の都合のみで人の都合を考えず、思いやりがない。心臓が悪くなりやすい。 利己は我が身の安全や安楽ばかりを求め、無精になる。少しの空腹も堪えられないので食べすぎて消化器が悪くなりやすい。 強欲は欲が深くお金やモノを溜め込み、自分の能力以上のものを欲しがる。便も溜め込んで便秘になりやすく、大腸・肺が悪くなる。 そして、これら全部または一部の我執が一定以上に強いと、腎・膀胱が悪くなる。腎系が悪くなると、自分に信頼がおけず、すべてにビクビクして恐れるようになります。私は恐れほどネガティヴな感情はないと感じます。。 (ここで臓器が「悪い」「悪くなる」というのは、実際に「○○炎」等の病気になるとか検査結果で悪く出る、ということに限りません。検査結果が悪くなくても病毒が一杯に溜まっていることがあるのです。)

そして人間である以上、誰もがこれらの我執をある程度は持ちますが、特に強いものがあると、各臓器の気の相生相克関係によって病毒が巡り、多種多様の病気が生み出されることになるのです。(詳細は本をお読みください。) そして進藤先生は、心の冷えは身体の冷えの5000倍も強いとおっしゃっています。数字の根拠はともかく、その感じは本当によくわかります。冷えとりを素直に実行する方ほど良い結果が早く得られるのは、素直な方は心の冷えが少ないからなのです。ある健康雑誌で「頑固な病気は頑固から治す」という記述を見たとき、言い得て妙!と思いました。

ある患者さんの例ですが、30年来の婦人科疾患をお持ちですが、施術間隔が空きがちなためなかなか結果が出ませんでした。治療にいらっしゃる度に「いい健康法を紹介してください」と聞かれるので、私も治っていただきたい一心で様々な療法をご紹介してきたのですが、いつも経済的な理由で中途半端になってしまうようなので、安価である冷えとりが一番だと考え、「是非きちんと冷えとりをしてください」と言うと黙ってしまうのです。私は強制しませんが、聞かれれば何度でもお薦めします。でも多分やる気がないのだろうと思っておりましたが、先日また同じように申し上げたら、
「あれは効かないです。それより何かいいサプリメントとかないんですか?」とおっしゃるのです。 私はびっくりして「冷えとりなさってないじゃないですか!」と言うと、「絹の靴下を履きましたが治りません。」とおっしゃり、その方が履いているのは絹の5本指靴下1枚だけでした。よほど重ね履きがいやなのか、忘れているのかわかりませんが、ちょっとの間1枚履いてみて長年の重症疾患が治らないなどと普通におっしゃる感覚が全く理解できません。私は患者さんに怒ることは滅多にないのですが、この時ばかりは思わず語気を荒げてしまいました。
「やるやらないはご自由ですが、きちんと実行せずに効かないなどと判断を下さないでください!」

この件を進藤先生に直接伺う貴重な機会がありました。 「この方は肝臓が悪く傲慢なため、靴下などで治るわけがないと冷えとりを馬鹿にし、見かけで見下されたくないので重ね履きをしない。また裏返しで卑屈にもなりサプリメントなどの流行り物に目が移る。肝臓の毒が消化器に流れるため胃腸が悪くて利己が強く、飲むだけの安易なものを求め依頼心が強くなり、更に消化器から腎臓へ毒が流れて婦人科が悪くなり、「何かいいものを紹介して!」と恐れでオタオタする。」
という意味の解説をいただき、ご本人にもお知らせ済みです。
なるほど!婦人科疾患や随伴する症状などから消化器と腎が悪いことは明らかでしたが、大もとが肝だとは…。 肝は「怒り」の感情をつかさどる臓器なのですが、この方は怒りっぽくなどない明るい方で、一見傲慢などという言葉は無縁に見えるのですが、見えない我執によって私のほうが怒りを呼び起こされてしまったのだなぁ、と理解しました。他の治療家の方はどうなのかわかりませんが、このように患者さんと共鳴して様々な感情や感覚が起こってくることがよくあります。そして、その感情や感覚が激しかったりヘヴィなほど病態は難しく、治療家側の疲労度も並ではないことは書かせてください…。
結局この方は、なかなか日程が合わず今は治療にいらしていませんが半身浴はされているはず。靴下を重ねていらっしゃればいいのですが…。少しでも良くなっていらっしゃることをお祈りします。

そして冷えとりにきちんと取り組んでいらっしゃる方は、生きることと冷えをとることが同義になっていきます。衣食住は勿論のことですが、例外なく「心の冷えとり」「心を整えること」に向き合っていらっしゃいます。 精神世界に目が向く方が多いですが、ある人は小林正観さんの著作を読み、家だけでなく会社中のトイレ掃除をして「ありがとう」を何万回も言うことで新しい境地が開けているようですし、過去世の影響が強い方は過去世療法を受けて心の謎解きをしたり、ホメオパシーのような波動療法を併用することで目覚ましい結果が出る方もいらっしゃいました。 (かく言う私も、フラワーエッセンスやホメオパシーなどに多いにサポートしてもらい、オーラソーマは今や生活の一部なだけではなく、仕事にもなってしまいました(笑))
そして「治そうという意識は殆どなくなり、今の状況をそのまま受け入れることができるようになってきた」とおっしゃる方が多いです。治癒はまず自己受容から始まります。病気の自分が不本意なことはわかりますが、「こんなの嫌!」と否定していると次に進めません。嫌な自分も大切な自分なのです。光と影、陰と陽、苦と楽…双方が織りなしているものが人間であり、世界であり、宇宙です。まるごとドンと受けとめる必要があるのです。すると影の部分である「何故病気になったのか」がわかるようになり、その原因を手放していけば治るはずなのです。これは誰かにやってもらうものでは決してなく、必ずご自分自身で経なければならないプロセスです。

前回取り上げた重症の麻痺の方の、あまりの落ち着きのなさに私は正直ヘトヘトになるのですが、
患者さん「治らないから落ち着いてられないのよ!」(=あんたが治してくれないからよ!の意味含み)
私「それは逆です!落ち着かないから治らないんです!!」
と毎回のように会話してます(そう言うと怒ってばかりいるみたいですが…汗)。すべては自分が引き起こしており、自分の責任は自分しかとれないことを受け入れなければならないのです。そのプロセスを経ていくと、病気とは学びのための貴重なチャンスであることがわかってきます。

…長くてまとまりがなくてすみませんが、後日もう1回全体のまとめを書くことを考えています。


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